紫式部の生涯を描く大河ドラマ「光る君へ」。その舞台のひとつである福井県越前市の龍田光幸副市長ほか観光担当者が、同市の魅力をPRしようと、朝日新聞メディアプロダクション大阪支社を訪れた。
紫式部が生涯でただ一度、都を離れて暮らしたのが現在の越前市。「紫式部が暮らした越前市」をキーワードに、同市は観光面での発信にいっそう注力している。5月下旬からはドラマ内で越前を舞台にしたパートが複数回にわたり放映され、さらに注目を集めている。越前で詠んだ歌が今も残るなど、雄大な自然や文化に触れた1年余りの暮らしは、才能ある紫式部の感性をより研ぎ澄まし、のちに源氏物語を執筆する原動力になったといわれている。
同市では、古くから和紙、打刃物、箪笥などの伝統工芸が根付いているが、「式部は、とりわけ越前和紙のなめらかさや質の良さに触れ、『この紙に物語を書いてみたい』と、創作意欲がわいたのでは」と、文化県都推進室の奥谷博之室長は話す。
大河ドラマの世界と越前市の魅力が凝縮された施設として、市内の武生中央公園に今年2月にオープンしたのが、「光る君へ 越前 大河ドラマ館」だ。大河ドラマで越前編が始まってから来客数はさらに伸びているといい、実際にドラマ内で着用された衣装をはじめ、木簡、筆などの小道具、主人公・まひろの父である藤原為時の書斎を再現したフォトスポットなど、「光る君へ」の世界に没入できる展示内容が人気だ。
4Kシアターでは、まひろ役の吉高由里子さん、為時役の岸谷五郎さんらが出演し、家族の絆について話題を繰り広げる映像が放映されている。一部の展示内容は6月28日からリニューアルされ、越前編でまひろが実際に着用した衣装展示のほか、フォトスポットは主要な舞台となった越前国府の長い回廊に模様替えされる。来館者は6月11日時点で5万人超。「ドラマ視聴のメイン層である女性を中心に、中京圏はじめ県外からも多く来場いただいている。北陸新幹線延伸(※3月に「越前たけふ」駅が開業)の効果もあり、首都圏からの新たな人の流れも感じている」と、龍田副市長は話す。
市内にはそのほか、「紫式部公園」「紫ゆかりの館」といった式部ゆかりのスポットもあり、さらに「越前和紙の里」「タケフナイフビレッジ」など、伝統工芸の魅力を体感できる施設も。「越前おろしそば」「たけふ駅前中華そば」「ボルガライス」など、ご当地グルメも味わいたい。
「これから暑くなる時期にぴったりなのが、冷たい『越前おろしそば』。市内に30店舗以上あり、だしの味や大根おろしの辛さなど、店によって違う個性をぜひ味わっていただきたいです。また秋になると、伝統の『たけふ菊人形』が始まります。大河の世界とともに、ぜひ越前市の魅力にふれてほしい」と、龍田副市長はメッセージを送った。